車椅子ウェディングドレスのテイストでご注文いただいたのは ボヘミアンウェディング。
ジャンタイムズ紙様の取材に合わせてお作り頂きました。
今BOHOウェディングでトレンドとして注目されているテイストのボヘミアンウェディング。
自由なワイルドさを繊細なレースで表現したり 乾いた大地のイメージのドライフラワーアレンジなどで ミックスされた表現が大人ウェディングの中で人気です。
ナチュラルやスレンダーなすとんと落ちるラインを車椅子の上でどうボヘミアンに表現すればいいか本当にできるのか悩みました。
まずボヘミアンウェディングで使えそうな素材のドレスを探します。
すとんと柔らかいイメージとナチュラル 少しワイルドなレースのイメージを
頭においてお探ししました。
そしてそのドレスをどう車椅子で素敵に見せられるかデザインを考えます。
車椅子という制限された中で動いても美しく華やかでボヘミアンの雰囲気を持つ・・・。難題でした。
デザイン画もたくさん起こしました
打ち合わせのなかで最後に絞り込んだのは2つのドレス。
胸元のドレープが美しいシフォンのドレスと 胸が花のモチーフで覆われチュールの幅広の方ストラップのついたドレス。
どちもスカートが何枚も重ねられたボリュームがリメイクには最適です。
私は車いすでの困りごと 上からの胸元への視線が気になり、方ストラップのあるドレスをお勧めしました。
悩んだ末 彼女がポツリともう一方のドレスの写真を手にとり
「でも・・・シンプルな こちらのドレスが好きなんです・・・」
はっとしました。
私はお好きなドレスを自分の選択で仕上げてください、と言っておきながら
完璧に仕上がる方へ、うまくいく方へ誘導しようとしている。全く嘘のほうへ行くところでした。
作り上げる事は難しいかもしれない。座っている状態のウェストから押し上げてくるバストの浮き、または下がってくるかもしれないバストカップをボーンだけで支え切れるのか とても不安でした。
でも、シンプルなボヘミアン
そう彼女が選択したしたのです。ドレスはこれに決まりました。
届いたドレスはまずまずのイメージ通り。
まずは解体作業に入ります。輸入のドレスは後でお直しができるように 大きなミシン針目で縫われていて 解体するにはもってこいなのです。
シンプルでボリュームのないドレスでは、車椅子の中ではただの白いワンピースになってしまう。
そこで、ドライなオーガンザーに刺繍のコットンレースとチュールで ハードな仕上がりになっているウェディングベールをそろえます。キラキラストーンのウェストベルトは取り外しコットンレースに取り換えます。
コットンレースで ボヘミアンの特徴的であるアームレストも追加
もちろん 企業秘密のパニエも彼女の車いすデーターに合わせてお作りします。
彼女の腹部には強い圧はかけられないために ペチコートは肌当たりのよいコットンスムースを使ったハイウェストデザイン。
通常車椅子ドレスのお背中は見えないという感じで後ろをシャーリングにするのですが、体幹のしっかりしている彼女には レースアップのデザインを残して利用。外した位置で前回できるオープンファスナーにしました。
バストのベルトも動かないようについていなかったベルト通しも付けます。
ボヘミアンの流れるようなラインを ドレープ表現で出しました。
ドレープを作りウェストに縫い込みさらにレース、チュールとドッキング。
車椅子で踏まないようにデザインをしすぎると丈の短いカジュアルなものになってしまいます。そこで、お写真を撮るときや移動の少ない時にはエレガントさを保ちたい、
そう思い丈の調節ができるように スナップを作りました。シフォンがとろんと落ちるところが素敵になりました。
ドレスのほかに
- ハンドリムを飾るストレッチレース5ⅿ
- 背もたれカバー
- バスト調節のためのブラカップ
- コットンレースのアームレスト
をセットします。
いよいよ納品です
コロナ騒ぎでいろいろな予定が変更する中 ご家族様そろって迎えていただきました。ペチコートを着てしまえば 着用は簡単に車椅子の上で着ることができます。
その間にご主人とお子様たちと一緒に車椅子のピンクのハンドリムにストレッチレースを巻き付ける装飾を行います。暖かく ちょっと汗をかいてしまいましたがみんな頑張りました。
ドライフラワーのアレンジとお願いしていたドレスにつけられるドライフラワー飾りをセットして完成です!
サイズも基本的にバストサイズでドレスを選択しているのでぴったりです。
ここからは まるで幸せな映画を見ているよう。
初め堅かったご家族の表情がみるみる柔らかくなり あふれるような笑顔で
おうちの周りや近所の海までも包まれたようでした。
「年齢やいろいろな事情を考えると 二度とドレスは着れないと思っていました。こんな機会があるなんて 本当に嬉しい。」
そう言って涙を浮かべてくださいました。私も感動して泣きそうに。
本当に素敵な時間を下さりありがとうございました!
有本奈緒美
20代前半から福祉施設勤務。老人介護、重度障害者施設、
障害者作業所、公立小学校での支援業務を経験。平成26年に進行性の難病の脊髄症である事が発覚し医師より診断を受け支援業務を断念。現在は両下肢機能障害で歩行困難になり車椅子生活です。福祉施設勤務の時から何となく将来歩けなくなることがわかっていました。
現在バリアフリー住宅にて プルメリアネイルを運営 車椅子モデル コンサル 教育機関での講演等で活躍中